知らぬ間に既存不適格物件だった!? 既存不適格物件の落とし穴

不動産活用

既存不適格物件とは

既存不適格物件とは、建物を建てたときには法律に適していた建物だったけれど、時代の流れで法律が改正されて「今の法律には適合していない建物」になってしまった物件をいいます。建築基準法は「国民の命と健康と財産を守ることを目的とした法律」です。時代の変化に応じて改正することは大切なことです。しかし、法改正するたびに法律に適合した建物につくりかえていくわけにはいきません。そのため、すでに建築されている建物については解体を求められたり、修繕を求められたりすることはありません。ただ、再建築をするときには話は違います。再建築するときには、現行の法律にあった建物を建てる必要があります。

似た言葉に違法建築物があります。既存不適格物件と違法建築物は全く意味が違います。違法建築物は、建物を建てるときの建築基準法に適合していなかった建物です。法改正によって知らず知らずのうちに不適合になったのではなく、建築当初から違法だったことになります。違法建築物や違反建築物は、既存不適格物件とは違い、特定行政庁や建築監視員によって是正命令や除去を命じられる可能性もあります。

既存不適格物件のメリットとデメリット

既存不適格物件にはメリットとデメリットがあります。メリットは、安く購入できることでしょう。既存不適格物件は、今ある建物をそのまま使うならば問題なく使用することができます。今ある建物がきれいでリフォームの必要もなく使えるようであれば、安く購入できるお得な物件かもしれません。

デメリットは、リフォームするときには規模や箇所によって現行の法律に適合させる必要があることです。簡単に適合させられる箇所ならばいいのですが、建物の敷地面積や建蔽率、用途地域が変わっている場合は簡単な工事では済まなくなります。例えば、既存不適格物件の特定天井を増改築する場合は、地震がきても落ちてこないように現行の特定天井の基準に適合させなければなりません。ただ、天井を現行の法律に適合するようにすべて改築することは大変な工事です。そのため、天井の落下防止措置としてネットをはったり、ワイヤーを使ったりして天井に吊り補強する緩和措置でも認められることがあります。既存不適格物件のリフォームについては、増改築の範囲や耐震診断の有無などによって現行法の緩和措置を受けることは可能です。

既存不適格物件の購入と売却と活用方法

既存不適格物件の購入と売却を考えている人もいます。購入を検討している人は「既存不適格物件を買っても大丈夫かしら」と心配になるでしょう。既存不適格物件は違反建築物とは異なります。そのため購入しても問題はありません。既存不適格物件は、まだ土地を贅沢に使うことができた時代に建てられた建物も多く、立地に恵まれている物件もたくさんあります。立地が良く、交通の便もよく、建物の状況もよければいい買い物ができるかもしれません。ただ、既存不適格物件を購入する場合は、資金繰りに注意が必要です。既存不適格物件は、どうしても市場価値が低くなりがちです。そのため、金融機関によっては住宅ローンが組めなかったり、組めたとしても融資額が小さかったりすることがあります。

既存不適格物件の売却を考えている人は「価値が低くて安い値段になってしまうのではないか」と心配になるでしょう。たしかに既存不適格物件をそのまま売却すれば、値段は安くなりがちです。少しでも高く売却するためには、現行の法律に適するような建物にしてから売り出すといいでしょう。また、既存不適格物件という名前は、建物についている名前です。更地にして建物をなくしてしまえば既存不適格物件ではなくなります。ただ、これらの手段にもデメリットはあります。現行の法律に適合するような建物にするためには、かなりのリフォーム代や増改築費が必要です。リフォーム費用を金融機関から借りる方法もありますが、住宅ローンと同様に既存不適格物件は市場価値が低いため、融資が受けられない可能性があります。更地にしてから売却する方法は、一見解体費用だけでいいためデメリットが少ないように感じます。しかし、売りに出してから買い手がつくまでは固定資産税を納める必要があるのです。土地に対する固定資産税は、建物が建っている状態の固定資産税よりもずっと高くなります。

出費をせずに既存不適格物件を活用する方法は、そのまま売却することも一つの選択肢です。建物を解体すれば解体費用と固定資産税の心配があります。既存不適合物件は、住宅ローンが組みにくいため、買い手が限られてしまいます。そのため、不動産業者によっては断る会社もあります。専門の買い取り業者もありますが、既存不適格物件であることを前面に出して安すぎる価格を提示してくることもあるので注意が必要です。

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