相続人のひとりが自分の相続分を他人に売っちゃったケース
相続が発生したら、相続人で遺産分割協議をします。相続発生のときから遺産分割協議が終わるまでは、相続財産は相続人の共有です。相続人は、ひとり一人が自分の法定相続分を持ち分として持っています。持ってはいるのですが、共有している財産を売却したり処分したりするときには、共有している相続人全員の許可をもらう必要があります。相続人の中でひとりでも「売りたくない」という人がいれば売却することはできないのです。
ただし、分割する前でも「相続する予定の分をそっくり売る」ことはできます。例えば相続持分に応じて不動産を均等に分割し相続する場合であっても「相続で取得する予定の不動産」として他人に売却することができます。買った人は、相続人の代わりに共有財産の共有
者になるのです。買った人は、遺産分割協議に出席することができますが、他人が協議に入ることは問題になる可能性があります。そんなときには「相続分取り戻し権」を行使することができます。「相続分取り戻し権」とは、共有財産の一部を買った人にお金を支払うことで共有持ち分を買い戻すことができる権利です。
相続人のひとりが自分の相続分を他人に売ってしまったときには「相続分取り戻し権」を使って遺産分割協議がスムーズに行われるようにしたほうがいいのかもしれません。
不動産の持ち主が行方不明になっているケース
不動産の相続は、被相続人がこの世を去ることで始まるケースがほとんどです。しかし、中には行方不明になってしまい、相続ができず放置されてしまう不動産があります。不動産は放置されてしまうと荒れ始める傾向があります。どんなに荒れ果ててしまったとしても、持ち主が行方不明の段階では相続も売却もできません。
持ち主が行方不明で相続したい不動産がある場合は失踪宣告を検討します。失踪宣告には普通失踪と特別失踪の2種類があります。普通失踪は、不明者の生死が7年わからない状況のときに請求することができます。特別失踪は、戦地に行った人や沈没船に乗っていた人などがその危難が去ったときから1年行方がわからないときに請求することができます。失踪宣告されると相続が開始されます。
不動産の持ち主が行方不明になってしまったときには、戻ってくるまで相続ができないということではありません。失踪の状況や年数に応じて失踪宣告を受けて相続することができます。
遺言書に問題があるケース
遺言書がある場合は、相続財産の分割は遺言書にもとづいて分割されます。しかし、遺言書によってはもめるケースがあります。例えば、不動産の分割は地積(面積)が非常に重要です。地積は、登記簿謄本上の記載に従って記載しますが、登記簿上の面積(公簿面積)は、実際の面積と違っていることがよくあります。なぜなら、昔は今ほど測量技術が発達していなかったからです。遺言書の面積が実際の面積と異なっていた場合ですが、面積は単に不動産を特定するために記載するものなので、実際の面積と違っていても、相続する時点で実際にあるものを基準にして計算します。あとあともめることがないように、遺言書に書く不動産の項目は正確な内容を記入しておくことが大切です。逆に、遺言書に書いていない土地や建物がみつかるケースもあります。その場合は、遺言書に書いてある分は遺言書通りに分割し、書いていない分は遺産分割協議を行います。
遺言書は複数出てきた場合ももめることになります。しかし、複数ある遺言書は、日付の新しいものが有効です。
遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。もめるケースになるのは「自筆証書遺言」がほとんどです。遺言書を作成するときには多少費用はかかりますが「公正証書遺言」を選んだ方がもめる可能性はグッと低くなるでしょう。
不動産相続で解決が難しいケースの流れ
不動産相続は、分割協議で分割方法を考えます。スムーズに分割協議ができればいいのですが、とくに不動産は分けにくいものなのでもめるケースがたくさんあります。相続人同士の話し合いで解決できないときには家庭裁判所に申し立てをして専門家の介入をお願いします。
家庭裁判所に申し立てを行う「遺産分割調停委員会」が立ち上がります。調停委員は、相続人の意見を個別に聞き取り、いいと思われる分割方法を提案してくれます。聞き取りのときには、弁護士や専門家に助言や代理人をお願いしたほうがいいケースもあります。調停委員は裁判官とは違い「判決」を言うわけではありません。あくまで提案をするだけです。提案された内容に納得できないときには「審判」を求めます。「審判」は裁判官による判断です。判断に応じない場合は、履行勧告が出される可能性もあります。
不動産相続は、遺産分割協議書がなければ相続手続きができないこともあり、中には自分に都合のいいように勧めるために、遺産分割協議書であることを隠して署名させる人もいるようです。一度作成された遺産分割協議書を覆すことはとても難しいことです。相続関係で署名押印を求められたときには、しっかりと内容を確認してから記入するようにしましょう。
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